地図の辞書と文法

地図が表現媒体である限り、そこには辞書や文法、修辞といった機能が潜在していることは容易に想像できます。地図の辞書とは、地図記号を並べた上で、一つ一つの意味を説明したものでしょう。典型的なのは凡例だと考えられます。地図の文法とは、記号の配列の法則であったり、記号の変化のあり方だったりします。

また、地図作成の基本ルールを指すとも考えられます。地図の修辞とは、地図記号の修飾を意味し、その記号配列を見た人に美しいと感じさせる技術でしょう。確かにこのように考えると、大体の地図に辞書、文法、修辞を認めることができます。例えば都道府県別の、機械工業の比率を、主題図が示しているとしましょう。そこには当然、実際の比率が数字で表現されているはずであり、これが辞書に当たると考えられます。また、比率が高いほど、模様の色味が濃くなることが見て取れるとしましょう。こうした表現は文法に該当すると考えられます。さらに、模様のあり方、線の太さ、間隔の取り方等が作成者の裁量の内にある時、そのアレンジは修辞と言えます。

 地図研究の中でも主題図の歴史は、それほど注目されてこなかった分野でしょう。地図の発達を考える上で、一般図に重点を置いた方が見通しも良いのは確かです。この傾向は時代を問わず当て嵌まり、前近代の地図についてはもちろんのこと、近代の専門的測図に関しても、注目点は制作技術であったり、測量技術であったり、世界観の変化であったりしてきました。ここで新たに主題図の発達史を見ることにしますが、こうした試みは全くの初めてでもなく、フンボルト等はその貢献者として知られています。フンボルトは南アメリカの研究に取り組む中で、有用な地図をたくさん残しました。

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