地図の文法

主題図に絞っても、テーマがはっきりと伝わり、ベースとなるマップがそれを助長するように構成されている地図は、専門家が見ても美しいと表現できるものです。つまり地図には明瞭性が何よりも求められます。地図に必要な正確さと美しさとは、信頼性と明瞭性を指すのであり、そのためには様々な工夫を凝らして作成に取り組む必要があるのです。ここでその工夫を考える上で、大切な概念について説明することにしましょう。

 地図も表現形態であると考えれば、それを文章に擬えることができるはずです。つまり辞書、文法、修辞等の概念が存在してもおかしくはありません。こうした擬えが決して無理のあるものではないことを、哲学者のソシュールは記号論を基に説明しましょう。ソシュールは言語を記号論で説明する傍ら、言語の特殊性についても言及しました。ですからソシュールを信奉する人は、言語と記号とを別物と分別しがちです。確かに読解する立場では、こうした理論も首肯できるのですが、他方で読解させる側に立てば、記号と同一視することにそれほど抵抗を感じません。地図を作成する者にとっても同様で、表現する以上、表現媒体は記号に過ぎません。この結論を指示するのは同じく哲学者のバルトでしょう。バルトは、「記号と言語とを分かつのは不可能だ。言語学の中に記号学が存在している」と語っています。

 バルトの立場に立脚すると、地図も表現媒体である以上、辞書、文法、修辞が存在します。もちろん全事象を言語と同一視することは叶わないまでも、共通部分に限り、そのように考えることはできるはずです。そこで、その共通点を探ることから始めなければならないのですが、この点でも記号論が役立ちそうです。

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